これであなたも下処理上手になる
本日は『食材の臭み取り』について解説していきます。
料理の下準備として行われる食材の『臭み取り』ですが、調理の現場では当たり前に行われている作業で、これをするとしないとではお料理の味がかなり違ってきます。
私は特にお肉やお魚の臭いに敏感なので、動物性食材を扱うときには必ずおこなっています。
この記事ではご家庭でも簡単にできる臭み取りの方法をご紹介していきます。お料理の味が間違いなく美味しくなる技法ですので、ぜひご自宅で実践していただきたいと思います。
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家で比較的簡単に実行できて、楽しくなる料理のアイデアです。
ぜひチェックして頂けると嬉しいです♪
■臭み取り7つの技
さて、『臭み取り』は雑味取りとも言えます。
②清酒やワイン漬け
③塩
④霜降り
⑤レモン(クエン酸)
⑥ハーブやスパイス
⑦焼き(魚)
ざっと挙げるとこの7つ。一見難しそうですが、どれも簡単です。
基本的に鮮度が良い食材はあまり念入りに臭み取りの必要はないのですが、青魚や少し鮮度の落ちた物、食材の雑味を取りたい場合には臭み取りの作業は必要です。
それではこの7つの臭み取りを、お魚・お肉・お野菜別に深堀りしていきます!
※ちなみに臭み取りに関してはまだまだ方法があるのですが、本記事ではこれら7つの基本的なやり方に注目してみていきます。
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■お魚の臭み取り
まず魚の生臭さの原因はトリメチルアミンというアルカリ性の揮発しやすい物質で、有機化合物の一種です。魚の水揚げ後、時間の経過と共に旨味成分の一つであるトリメチルアミン-N-オキシドが分解して生じた物です。
トリメチルアミンの性質
水に非常に溶けやすい。低濃度では魚臭、高濃度ではアンモニア状の臭気を有する。
魚類は、浸透圧調節作用を持つ成分として、トリメチルアミン-N-オキシド (TMAO) を持ち、還元されることでトリメチルアミンとなる。トリメチルアミンは魚が腐敗したときの臭いの原因の一つである。
ではこの臭いの対処法を具体的に見ていきます!
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酢洗い
トリメチルアミンはアルカリ性なので、酸性のお酢などで中和させ化学的に臭い物質を抑制させます。
水を張ったボウルにお酢を一まわし入れ、お魚の身を入れて優しく洗います。ついでに血合いや残った鱗も落としちゃいましょう。洗ったら水気をキッチンペーパーでよく拭き取って、味付けをしていきます。
この方法では魚の臭みの大部分は抑えられますが、完全には難しいです。内部に若干臭いが残ります。なので、ハーブやスパイス、お酒、後述するレモンやソースなどで複合的に臭いを抑える工夫が必要です。
また、煮物をする際に大さじ1杯〜2杯のお酢を回しかけると臭みを抑える効果がありますので、例えば青魚系の煮物がなんか臭いな〜と感じている方は試してみてください。
・臭みが魚の表面だけにある場合に有効。
清酒やワイン漬け
アルコールには揮発するときに食材に含まれる臭い物質を一緒に揮発させる「共沸」という効果があります。さらに臭いをマスキングする(抑える)効果や身を柔らかくする効果に加え、旨味成分も大量に含まれているので下準備や調理途中に使うには持ってこいの調味料と言えます。
私のイメージ的に、
『清酒』は旨味成分の添加と臭い消し
『ワイン』は香りと酸味と臭い消し
という具合に使っています。きちんと揮発させないとお酒による臭み取りの効果は出にくいという事を覚えておきましょう。
使い方としては、切り身にキッチンペーパーを被せて清酒を振りかけます。ペーパー全体が湿る程度の量に抑え、約20分置いてから味付けしていきます。
そうすると無駄に清酒を使う事なく全体にお酒の成分を行き渡らせる事ができます。魚の切り身が大きい場合にはお酒をかけた後軽く揉み込むと良いでしょう。本みりんも同様に効果がありますが甘味がついてしまうので、用途に合わせて。
ちなみに、お酒に含まれているアルコールは分子が細かく砂糖よりも浸透性が高いので、後に加える調味料の染み込み(拡散)を高めてくれます。料理のさしすせその"さ"の前にお酒、と覚えておくと良いでしょう。
スタイル的に和食では清酒、洋食では白ワインで使い分けています。
塩
これは調理の現場でもよく行われます。魚の切り身に塩を軽く振ります。すると浸透の作用で中の水分が臭い成分を伴って出てきます。これをキッチンペーパーで拭き取るか、流水または酢水でさっと落とします。
私の場合、味付けも兼ねて魚の重量に対して0.8%程の塩を皮に4、身に6という割合で振ります。
『白身魚』は塩を振って5分~10分、『青魚』は白身魚より少し多めに塩を振り20分〜30分程置きます。放置時間が長いと旨味成分まで流れ続けてしまうので放置し過ぎないように注意してください。
・塩気が身に入っているので、ソースや付け合わせの味付けのバランスを取ってあげる必要があります。
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霜降り
80度の熱湯に切り身をさっとくぐらせて、血合いや汚れ、ぬめり、微細な鱗などを取り除きます。身が白く変化する事から霜降りと呼ばれています。
霜降りした物は水を張ったボウルに取って綺麗に洗い、その後水気を拭き取ってから調理に移ります。
臭いが強い状態の魚は、塩を打った身を置いた後にお酢又はお酒を加えた熱湯に潜らせて霜降りします。そうするとかなりの臭いをとる事ができます。
・沸騰したお湯はNG。
レモン
これはかなり効きます。お料理の仕上げやマリネの際に絞ってふりかけます。
お魚の脂質は水揚げ後から酸化していき、過酸化脂質に変化していきます。これによる酸化臭がお魚の臭いの一つの要因になります。
一般的に赤身魚には脂質が多く含まれ、時期によりその含有量は大きく変化します。
ちなみに青魚は水産学上の分類ではなく、赤身魚の内、背中が青く見える魚の事を指します。
※青魚=アジ・イワシ・サバ・サンマ・ニシン・キビナゴ・サワラ・タチウオ・トビウオ
お魚の中の金属イオンが脂質と反応するので、脂質が多い魚程酸化が進む=足が早い事になります。
この酸化を抑えるのがキレート作用であり、レモンに多く含まれるクエン酸とお魚の中にある金属イオンが結合する反応を指します。
下処理の際、例えばマリネしたりする際にレモン汁をかけてあげると足が早い赤身魚でも比較的美味しさを保ったまま保存できます。加えてラップでピッタリ密閉してあげると、さらに酸化を抑える事ができます。
また、このキレート作用は単に脂質の酸化を抑えるだけでなく、カルシウムや鉄、亜鉛などのミネラルを包み込んで、消化管からの吸収率をUPしてくれます。さらに、金属と強いキレート作用をもつこのクエン酸は、体内に吸収された有毒な金属を体外に排泄する効果が知られています。
すごいですよね、クエン酸って。
お酢と同様に酸性なので魚の臭み成分を中和する効果もあります。有能、好き。
ハーブやスパイスでマスキング
■お肉の臭み取り
さて、次はお肉の臭み取りをご紹介します。
と言っても、お肉は基本的に新鮮であれば臭気はそんなにありません。臭気がある時は腐りかけた時です。なので臭みを取る下準備などは魚に比べて熱心にやる必要はありません。
では実際に見ていきましょう。
酢洗いor水洗い
お肉ではあまりやりませんが、お肉に臭いが出始めた時に行います。
魚や鶏肉に含まれるトリメチルアミンはアルカリ性なので、酸性のお酢などで中和させ化学的に臭い物質を抑制させます。
水を張ったボウルにお酢を一まわし入れ、お肉を入れて優しく洗います。洗ったら水気をキッチンペーパーでよく拭き取って、味付けをしていきます。
※鶏肉は皮と身の間にある油が臭いますので、包丁でよくこそぎ取っておくのも重要です。
清酒やワイン漬け
お肉の場合は、例えば香味野菜・ワイン・ブーケガルニと一緒に漬け込みます。
アルコールがもつ共沸効果については魚の項で上述したので省きます。
お肉をワインに漬け込むと、香り・コク・消臭の効果があります。
赤ワインで漬けるとお肉表面が引き締められ旨味を逃しにくくなり、白ワインで漬けるとお肉が柔らかくなるという特徴があります。
唐揚げなどの場合では漬け込む調味料と一緒に清酒も加えます。量は全体にうっすら馴染む程度。多すぎると火を加える時にアルコールが飛び切りませんので注意です。ニンニクや生姜のすりおろしも同じく消臭効果があります。
調理系のワインは大容量のものがオススメ。コスパいいし、そのまま飲んでも美味しいものはこちら。
霜降り
魚の時と同じく、80度の熱湯にさっと潜らせて血合いや汚れ、滑りなどを取り除きます。薄くスライスした細切れ肉や一口大程の小さいお肉で行います。私は生姜焼きを作る際に毎回やります。
霜降りした物は水を張ったボウルに取って綺麗に洗い、その後水気を拭き取ってから調理に移ります。
※これを唐揚げの下準備で行ってしまうと、身が締まって味が入りにくくなるので注意!唐揚げは調味料で揉み込むのが一番です。
ハーブやスパイスでマスキング
お魚と時と同様です。お魚の項で触れたのでマスキングの説明は省きます。西洋料理の臭み取りの方法ですね。
使われるスパイスやハーブはお魚とは少しだけ変わります。
ブラックペッパー、コリアンダー、ローズマリー、タイムなど、お肉の強い旨みに負けないものを使用します。
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■お野菜の雑味取り
そう、実はお野菜も臭み取り=雑味取りをするのです。
霜降り(水から始めて煮こぼす)
主に根菜で行います。鍋に水を張り、カットした根菜を入れて中火で80度まで沸かしていきます。灰汁が出れば取り除きます。ザルにあげて軽く流水で流した後、調理に移ります。
根菜を霜降りした後のお湯でお肉を霜降りすると経済的です。お湯を入れ替えなくて済みます。
お野菜の霜降りをやると驚く程料理の味が変わります。お野菜の雑味が消え、それぞれの味がハッキリするのです。
肉じゃがや筑前煮など、多くの根菜の煮物であるほど変化は顕著に現れます。食材が高品質で、味をクリアに感じさせたい時にとても効果的です。
高級料亭ではこういう細かな工夫が色んな場面で施されています。美味しくなる工夫とお金と手間を惜しまないので素晴らしいですね。
一方、鍋などの色んな具材が入るものでも霜降りする必要があるのか?という所ですが、それはしてもしなくてもどちらでもよいです。個人的には鍋でそんな無粋な事してたまるか!って感じです(笑)鍋は鍋の楽しみ方、味わい方でよいです。
■具体例
さて、ここまで7つの臭み取りのやり方をみてきました。
最後に料理の具体例をみて、どんな処理が行われているのかを確かめてみましょう。
・魚の味噌煮
塩を打って臭みの水分を抜いた後、霜降りして調理する。
・魚の照り焼き
塩を打って臭みの水分を抜いた後、小麦粉をつけて焼く。
・魚のカルパッチョ
塩・オリーブオイル・レモン・ハーブ・スパイスでマリネする。
・エスカベッシュ
塩を打って臭みの水分を抜いた後、小麦粉をつけて揚げる。その後調味液とお野菜白ワイン・ハーブ・スパイス・レモンを加えて漬ける。
・ステーキ
焼く直前に塩・スパイスで調味、ハーブを加えて焼く。
・牛肉の赤ワイン煮込み
お肉をブーケガルニ・香味野菜・赤ワインに漬け込んだ後、水気をきって塩・胡椒をして焼く。
・肉の唐揚げ
醤油・ニンニクと生姜のすりおろし・清酒・で漬け込む。
・筑前煮
根菜とお肉を霜降りしてから、煮込み始める。
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■その他臭み取りにオススメなもの
●料理酒
スーパーで料理酒を買ったら塩が入ってるものだった...!なんて事はよく聞きます。とはいえ純米大吟醸酒なんていう清酒を買う必要もありません。
雑味の多い安価な清酒の方が、臭み取りには最適です。
●オリーブオイル 3L
マリネしてマスキングに使うオリーブオイルは上質なものでなくてもよいです。大容量の物を買えばコスパが良いですよ。
●ステンレスバット
これが一つあるとマリネをする時にとっても便利。安心のパール金属さんのステンレスバット。複数個持っておくと料理がとても捗ります♪
パール金属 オーブ ステンレス製角バット 取 型番:H-7498
■まとめ
今回は臭み取りをよく使われる方法を7種類に絞って見てきました。
これら7つの方法が大まかなベースになります。
そして世の中のシェフ達は色んな工夫を日々編み出しています。
例えば紅茶や緑茶で霜降りしたり、アールグレイの茶葉でお魚をマリネをしたり、乾燥昆布と清酒・麹で熟成させたり、ハーブで蒸し上げたり、ハーブとスパイスで燻製したり、木の実で燻したり、柑橘の皮でうまく香りをつけたりと、
季節の素材で遊ぶようにアイデアを生み出していっています。
やり方はまだまだたくさんあり、自由です。
まずはこの基本のやり方で感覚を掴んで、そこからアレンジしていってみてください。
あなたの料理ライフがより良いものになりますように♪
最後まで御覧いただき、ありがとうございました。
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